書き物の間

4.迷いの森(1)

「テンゾウ、カカシさんはどうだ?チーム組みだして3ヶ月くらい経つよな」
友達のヌカタと休みが重なり、暗部がよく使う食堂で一緒に晩御飯を食べていた。

「やっぱあの人はすごいだろう。」
ヌカタは以前からカカシに心酔している。
「そうだな。確かに任務中はすごいよ。イライラするくらい。」
「い・イライラって何で?」
「危ない事全部一人で引き受けてしまうところがね。イライラする。
そりゃ僕が頼りにならないからかもしれないけど。」

 テンゾウの言葉にヌカタが首を振った。
「いや、お前が頼りないというより、カカシさんはそういう人なんだろう。
合同任務で一緒になった時、オレはともかく他の人は優秀な暗部ばかりだったけど、
やっぱり危険分野は一人引き受けてたぜ。ま、出来る人だし。」

 テンゾウは自分の未熟さ故かと思っていたので、ヌカタの言葉は意外だった。
「他の人と組んでもそうなのか。」


『オレが行くからテンゾウは後ろで援護してて。』
笑顔でさらりとそう言って、先頭きって切り込んでゆく。

 確かに高い能力に自信があるのはそうなのだろう。
だが、テンゾウと組んでる時だけでなく、他の人ともその戦闘スタイルというなら
以前から感じていた違和感が更に強まる。


   − カカシ先輩は死を恐れないというより、生に未練がないのではないか−


 チーム組んで初任務の時も、怪我を負った上チャクラを使いきり、カカシは入院した。
しかしテンゾウが強引に連れて行かなければ病院には行ってなかったろう。
退院の時は付き添い、任務出発前のままとなっていたカカシの部屋へ行き、掃除を手伝ったが、
シンプルな部屋で最低必要な家具と、本くらいしかなく埃さえほとんどたまってなかった。
およそ生活臭というものがない部屋。
カカシの食を心配して、テンゾウは何度か食事にも誘った。
最初は必ず『彼女とちゃんと会えよ。』と言って断る。
それでもと食い下がって、何度かは一緒に食事に行ったが、相変わらず食は細かった。
話す内容も、巧みに自分の事は何一つ話さない。
自分の痕跡というものを残さないかのようだ。


「テンゾウ、どうした?」
つい、カカシの事を考え込んでしまったテンゾウにヌカタが話しかけた。
「いや、カカシ先輩今頃くしゃみしてるかなって思ったんだよ。」
「そうだな、俺達会うとカカシさんの話してるな。
まあ、どうしても噂になりやすい人だよ。クノいち達の人気はナンバーワンだしな。」
「そうだな。」
頷きながら、テンゾウはカカシには、自分が目立つ存在という自覚がないんだろうと思った。
生活する中の様々な出来事から、どこか距離を置いた存在のカカシ。


   −僕はまた考えてる−


 カカシの事ばかり考えてしまう自分をテンゾウは自覚していた。

戻る 続く