「じゃあ、お疲れさん。」
カカシがいつものように任務中とは全く違う、穏やかな笑顔でテンゾウに言った。
「はい、お疲れ様でした。」
本日の任務は外出する火影の護衛だった。
火影執務室前の護衛は、また別の暗部が交代で担当しており、
カカシチームは火影が執務室に戻った所で本日の任務は終わり。
暗部待機所へ一旦寄り、引継ぎの書類にサインする。
火影の護衛の場合、特に変わったことがなければ、任務報告書はいらず、サインだけでいい。
報告書も作る必要がなく、時間はまだ昼を少し過ぎたばかり。
テンゾウはカカシを食事に誘うつもりだった。
「あの、カカシさん。」
「よう、カカシ!、テンゾウ!久しぶりだな。」
テンゾウがカカシに話しかけようとしたと同時に、二人を呼ぶ声がした。
テンゾウが振り返ると、暗部仲間のシキリが歩いてくるのが見えた。
シキリはテンゾウが2年前暗部に入った時のチームリーダーで、
テンゾウより8歳年上の暗部の中ではベテランといえる忍だった。
何より面倒見が良く、暗部に入りたてのメンバーは最初はシキリと組む事が多い。
テンゾウも約1年世話になり、暗部の基本を教えてくれた人だった。
「シキリさん、お久しぶりです。」
テンゾウがぴょこんと頭を下げ、挨拶する。
「お久しぶりです。」
カカシも会釈をした。
「何だ、カカシお前相変わらず細こいなあ。ちゃんと飯食ってるか?」
カカシはまだ21歳だが、暗部には13歳から所属している。
その頃、暗部にいた忍は九尾の変で殉職したものも多く、
今いる暗部は、九尾の変以降に入ってきた者が多かった。
年齢は上でも、キャリアの長いカカシに敬語を使う者が多い。
シキリはキャリア的にもカカシより長く、カカシを呼び捨てに出来る数少ない暗部の一人だった。
「ちゃんと食べてますよ。」
カカシが笑って答えた。
「何がおかしい?」
「いや、何かテンゾウと同じ事言うなあと思って、こいつもいつも俺の食事気にするんですよ。」
「先輩がほんとに食べないからですよ。」
分が悪くなったカカシは話を変えた。
「シキリさん、今、国境警備なんですよね。今日は休暇ですか。」
「ああ、3日間休暇だ。」
国境警備はそこに寝泊りするが、もちろん休暇は交代でとることになっている。
「じゃあ、休暇届け出して来るよ。」
そう言ってシキリは暗部待機所へ向かった。
「失礼します。」
カカシはシキリに頭を下げ、テンゾウにも
「じゃあ。」
と言ってすぐに行ってしまった。
「あ、・・。」
テンゾウはカカシを誘いそこねた。