書き物の間

4.迷いの森(2)

「じゃあ、お疲れさん。」
カカシがいつものように任務中とは全く違う、穏やかな笑顔でテンゾウに言った。
「はい、お疲れ様でした。」

 本日の任務は外出する火影の護衛だった。
火影執務室前の護衛は、また別の暗部が交代で担当しており、
カカシチームは火影が執務室に戻った所で本日の任務は終わり。
 暗部待機所へ一旦寄り、引継ぎの書類にサインする。
火影の護衛の場合、特に変わったことがなければ、任務報告書はいらず、サインだけでいい。

 報告書も作る必要がなく、時間はまだ昼を少し過ぎたばかり。
テンゾウはカカシを食事に誘うつもりだった。
「あの、カカシさん。」
「よう、カカシ!、テンゾウ!久しぶりだな。」
テンゾウがカカシに話しかけようとしたと同時に、二人を呼ぶ声がした。
テンゾウが振り返ると、暗部仲間のシキリが歩いてくるのが見えた。

 シキリはテンゾウが2年前暗部に入った時のチームリーダーで、
テンゾウより8歳年上の暗部の中ではベテランといえる忍だった。
何より面倒見が良く、暗部に入りたてのメンバーは最初はシキリと組む事が多い。
テンゾウも約1年世話になり、暗部の基本を教えてくれた人だった。
「シキリさん、お久しぶりです。」
テンゾウがぴょこんと頭を下げ、挨拶する。
「お久しぶりです。」
カカシも会釈をした。
「何だ、カカシお前相変わらず細こいなあ。ちゃんと飯食ってるか?」

 カカシはまだ21歳だが、暗部には13歳から所属している。
その頃、暗部にいた忍は九尾の変で殉職したものも多く、
今いる暗部は、九尾の変以降に入ってきた者が多かった。
年齢は上でも、キャリアの長いカカシに敬語を使う者が多い。
シキリはキャリア的にもカカシより長く、カカシを呼び捨てに出来る数少ない暗部の一人だった。

「ちゃんと食べてますよ。」
カカシが笑って答えた。
「何がおかしい?」
「いや、何かテンゾウと同じ事言うなあと思って、こいつもいつも俺の食事気にするんですよ。」
「先輩がほんとに食べないからですよ。」
分が悪くなったカカシは話を変えた。
「シキリさん、今、国境警備なんですよね。今日は休暇ですか。」
「ああ、3日間休暇だ。」
国境警備はそこに寝泊りするが、もちろん休暇は交代でとることになっている。

「じゃあ、休暇届け出して来るよ。」
そう言ってシキリは暗部待機所へ向かった。
「失礼します。」
カカシはシキリに頭を下げ、テンゾウにも
「じゃあ。」
と言ってすぐに行ってしまった。
「あ、・・。」
テンゾウはカカシを誘いそこねた。

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