書き物の間

4.迷いの森(3)

 テンゾウがカカシを誘いそこね、突っ立っていると、暗部待機所から、シキリが出てきた。
「テンゾウ、どうした?カカシは?」
「帰りました。」
「何だ。お前ら、任務終わりだったのか。これからと思ってたよ。だったら食事でも行かないか?」
カカシが帰ったのは残念だったが、以前世話になったシキリと、久しぶりの再会も嬉しく、
テンゾウはシキリと一緒に暗部食堂へむかった。

「カカシとの任務はどうだ?」
席に着くなり、シキリに聞かれる。
「その質問、一日一回は誰かに聞かれますよ。」
「ははは、そうか。しかし、カカシとチーム組んだら、
みんなから注目浴びるのは仕方ないよ。アイツは人気者だから。」


 テンゾウは暗部に来た頃からのカカシを知っているシキリに、気になっている事を尋ねてみた。

 一人で危険に飛び込む刹那的な戦い方、
誰とでも明るく接する割りに、どこか一定の距離感を保ったままと感じる事。

「初め、僕が信頼されてないと思ってたんですけど、誰に対しても同じというか・・・。
戦い方に関しても、付き合いも。」
テンゾウの曖昧な話をシキリは真面目に聞いていてくれた。


「カカシが暗部に来た頃は周り中、年上だったが、ズバズバ意見を言って、
大事なのはチームワークだなんて言ってたよ。」
 テンゾウの話を一通り聞いてから、シキリが話し始める。
「暗部にアイツが来て1年程で、例の九尾の事件で4代目が亡くなってからだな、変わったのは。」

「俺たちも暗部仲間を失ったし、皆が辛い時期だったが、
特にカカシはまだ子供で、4代目には特別に懐いてたから
周りの者は心配したよ。」
「カカシ先輩が立ち直れないんじゃないかと?」
「そう、後追いでもしかねないほどの嘆きようだったから。
後に聞いた話では、正規部隊の医療忍者で仲良かったクノ一も亡くなったらしい。」

 それは初耳だった。
テンゾウは話に聞き入る。

「段々に、里も俺たちも日常に戻っていったが、沈んでたカカシがある時から妙に明るくなりすぎて。」
「明るくなりすぎ?」
「そう、人当たりが良くなって意見とかしなくなったな、
事件以降は批判する前に自分が面倒な事は片付けてしまう、って感じでさ。」
「そう、今もそうです。」
テンゾウが頷く。
「皆も俺も、立ち直ったって思ってたけど、やっぱ違うのかもしれないな。
暗部に来る前に、両親も亡くしてるし、この世に執着はないのかもしれない。」

 シキリの話は、テンゾウの感じてた思いと合点した。
「あんなにもてるのに、特定の恋人も作らないしな。
思いが残らないようにしてるのかもな。」
続けてシキリが話す。

「カカシさんは恋人いないんですか?」
自分ではカカシに聞けなかった事をシキリに聞く。
「まあ、強引に自分から仕掛ける女も結構いるし、関係は持ってるだろうけどな、
俺の知ってる限りでは決まった恋人はいないと思うよ。」

 カカシに恋人はいないというシキリの言葉を、テンゾウは頭の中で反芻していた。

戻る 続く