テンゾウがカカシを誘いそこね、突っ立っていると、暗部待機所から、シキリが出てきた。
「テンゾウ、どうした?カカシは?」
「帰りました。」
「何だ。お前ら、任務終わりだったのか。これからと思ってたよ。だったら食事でも行かないか?」
カカシが帰ったのは残念だったが、以前世話になったシキリと、久しぶりの再会も嬉しく、
テンゾウはシキリと一緒に暗部食堂へむかった。
「カカシとの任務はどうだ?」
席に着くなり、シキリに聞かれる。
「その質問、一日一回は誰かに聞かれますよ。」
「ははは、そうか。しかし、カカシとチーム組んだら、
みんなから注目浴びるのは仕方ないよ。アイツは人気者だから。」
テンゾウは暗部に来た頃からのカカシを知っているシキリに、気になっている事を尋ねてみた。
一人で危険に飛び込む刹那的な戦い方、
誰とでも明るく接する割りに、どこか一定の距離感を保ったままと感じる事。
「初め、僕が信頼されてないと思ってたんですけど、誰に対しても同じというか・・・。
戦い方に関しても、付き合いも。」
テンゾウの曖昧な話をシキリは真面目に聞いていてくれた。
「カカシが暗部に来た頃は周り中、年上だったが、ズバズバ意見を言って、
大事なのはチームワークだなんて言ってたよ。」
テンゾウの話を一通り聞いてから、シキリが話し始める。
「暗部にアイツが来て1年程で、例の九尾の事件で4代目が亡くなってからだな、変わったのは。」
「俺たちも暗部仲間を失ったし、皆が辛い時期だったが、
特にカカシはまだ子供で、4代目には特別に懐いてたから
周りの者は心配したよ。」
「カカシ先輩が立ち直れないんじゃないかと?」
「そう、後追いでもしかねないほどの嘆きようだったから。
後に聞いた話では、正規部隊の医療忍者で仲良かったクノ一も亡くなったらしい。」
それは初耳だった。
テンゾウは話に聞き入る。
「段々に、里も俺たちも日常に戻っていったが、沈んでたカカシがある時から妙に明るくなりすぎて。」
「明るくなりすぎ?」
「そう、人当たりが良くなって意見とかしなくなったな、
事件以降は批判する前に自分が面倒な事は片付けてしまう、って感じでさ。」
「そう、今もそうです。」
テンゾウが頷く。
「皆も俺も、立ち直ったって思ってたけど、やっぱ違うのかもしれないな。
暗部に来る前に、両親も亡くしてるし、この世に執着はないのかもしれない。」
シキリの話は、テンゾウの感じてた思いと合点した。
「あんなにもてるのに、特定の恋人も作らないしな。
思いが残らないようにしてるのかもな。」
続けてシキリが話す。
「カカシさんは恋人いないんですか?」
自分ではカカシに聞けなかった事をシキリに聞く。
「まあ、強引に自分から仕掛ける女も結構いるし、関係は持ってるだろうけどな、
俺の知ってる限りでは決まった恋人はいないと思うよ。」
カカシに恋人はいないというシキリの言葉を、テンゾウは頭の中で反芻していた。