書き物の間

4.迷いの森(4)

 シキリがテンゾウの顔を覗き込む。
「お前は恋人いるのか?」
「え!?あの、僕ですか?ハア、一応いますけど。」
突然、シキリが話をテンゾウの事に変えたので驚く。
「そうかあ。いや、いるんなら安心した。」
「な、何がですか?」

 シキリはしばし、テンゾウの顔を見つめ、やがて口を開いた。
「お前は人の事、べらべら噂流すタイプでないし、お前への忠告も兼ねて、言っとくけどな。」
「はい?」
「カカシはお前と組む前は、トミヲという奴と組んでたんだけど、
チーム解散したのはトミヲがカカシに惚れたせいなんだよ。」
テンゾウは、ちょうどお茶を飲もうと口を開けた瞬間だったが、そのまま動きが止まってしまった。
「え・・?ええ?」
「カカシは、ほら、あのとおり、妙に色気があるからな。
暗部は数的に圧倒的にクノ一が少ないから、余計にカカシが目立つのかもしれないけど。」
「は、はあ。」

 テンゾウは自分でも脈拍が速くなっているのがわかった。
シキリは話を続ける。
「そんで、トミヲはカカシに大胆にも告白して、当たり前だが上手くいかなくて、結局チームは解散よ。
トミヲは正規部隊に移動した、自分から火影様に依頼してな。失恋した相手と組むのはそりゃ辛いもんな。」
「知らなかったです。」
「そりゃ、内緒よ。俺はトミヲに直接相談されたから、知ってるんだ。
やめとけって、言ったけどな。
カカシが人と距離を置いてるって言うのは今、お前の話を聞くまで、わからなかったが、
それ以前に同性なんだからな。
お前がカカシの話を始めた時、またかよと思って内心あせった。」

 シキリがちょっと微笑んだ。
「でも、彼女がいるんならお前が不毛な色恋に悩む心配はないな。
チームとして、1人で危ない事につっこむカカシが気になっただけだろう?」
「ええ、まあ・・・。」
テンゾウはどう答えていいものかわからず、曖昧な返答しか出来なかった。


「カカシに惚れるなよ。」
そう、冗談とも本気ともつかない言葉を言って、シキリは帰って行った。

 テンゾウは彼女、あやめの事を考える。
実は最近うまくいってない。原因は明らかに自分だった。
正規部隊の中忍あやめは、友人ヌカタとその恋人からの紹介だった。
可愛い子で、気立ても良く付き合い始めたが、自分はあやめの事を、好きなのか最近わからなくなって来ている。
休みでも、あやめの方から連絡が来ないと、そのままにしてしまう。
時間があれば、修行をしたかった。自分のためというより、カカシの為に、
カカシを1人で危険にさらすことのないように。
食事に行く時はカカシを誘った。断られる事も多かったが。

『どうして、テンゾウのほうから連絡くれないの!?』
会えば責められている。
「は〜・・・。」
思わずため息がでる。
『カカシに惚れるなよ。』というシキリの言葉と、 
カカシに想いを寄せて、暗部を辞めたという、トミヲの事が頭をよぎって更に、テンゾウは深いため息をついた。  

戻る 続く