シキリがテンゾウの顔を覗き込む。
「お前は恋人いるのか?」
「え!?あの、僕ですか?ハア、一応いますけど。」
突然、シキリが話をテンゾウの事に変えたので驚く。
「そうかあ。いや、いるんなら安心した。」
「な、何がですか?」
シキリはしばし、テンゾウの顔を見つめ、やがて口を開いた。
「お前は人の事、べらべら噂流すタイプでないし、お前への忠告も兼ねて、言っとくけどな。」
「はい?」
「カカシはお前と組む前は、トミヲという奴と組んでたんだけど、
チーム解散したのはトミヲがカカシに惚れたせいなんだよ。」
テンゾウは、ちょうどお茶を飲もうと口を開けた瞬間だったが、そのまま動きが止まってしまった。
「え・・?ええ?」
「カカシは、ほら、あのとおり、妙に色気があるからな。
暗部は数的に圧倒的にクノ一が少ないから、余計にカカシが目立つのかもしれないけど。」
「は、はあ。」
テンゾウは自分でも脈拍が速くなっているのがわかった。
シキリは話を続ける。
「そんで、トミヲはカカシに大胆にも告白して、当たり前だが上手くいかなくて、結局チームは解散よ。
トミヲは正規部隊に移動した、自分から火影様に依頼してな。失恋した相手と組むのはそりゃ辛いもんな。」
「知らなかったです。」
「そりゃ、内緒よ。俺はトミヲに直接相談されたから、知ってるんだ。
やめとけって、言ったけどな。
カカシが人と距離を置いてるって言うのは今、お前の話を聞くまで、わからなかったが、
それ以前に同性なんだからな。
お前がカカシの話を始めた時、またかよと思って内心あせった。」
シキリがちょっと微笑んだ。
「でも、彼女がいるんならお前が不毛な色恋に悩む心配はないな。
チームとして、1人で危ない事につっこむカカシが気になっただけだろう?」
「ええ、まあ・・・。」
テンゾウはどう答えていいものかわからず、曖昧な返答しか出来なかった。
「カカシに惚れるなよ。」
そう、冗談とも本気ともつかない言葉を言って、シキリは帰って行った。
テンゾウは彼女、あやめの事を考える。
実は最近うまくいってない。原因は明らかに自分だった。
正規部隊の中忍あやめは、友人ヌカタとその恋人からの紹介だった。
可愛い子で、気立ても良く付き合い始めたが、自分はあやめの事を、好きなのか最近わからなくなって来ている。
休みでも、あやめの方から連絡が来ないと、そのままにしてしまう。
時間があれば、修行をしたかった。自分のためというより、カカシの為に、
カカシを1人で危険にさらすことのないように。
食事に行く時はカカシを誘った。断られる事も多かったが。
『どうして、テンゾウのほうから連絡くれないの!?』
会えば責められている。
「は〜・・・。」
思わずため息がでる。
『カカシに惚れるなよ。』というシキリの言葉と、
カカシに想いを寄せて、暗部を辞めたという、トミヲの事が頭をよぎって更に、テンゾウは深いため息をついた。