2人が組みだして7ヶ月も過ぎた頃、カカシとテンゾウに国境警備任務が回ってきた。
ツーマンセル5組の計10人のメンバーで、1ヶ月受け持つ。今回もカカシは分隊長として参加していた。
国境の見張りは24時間なので、シフトを組んで、チーム毎に交代で行う。
目的のはっきりしている任務と違い、国境警備は何も起こらないことが前提である。
隣国と隣り合わせの緊張する場所であるが、戦闘している訳ではない。
隣国と自国を繋ぐ街道では、仕事などで人々が行き来するが、
暗部が見張るのは、正規の入国者が通る場所ではなく、
街道から離れた、不法入国者が入り込む人気のない場所。
周囲には店など何もない。
見張り任務についてない時間でも、結局は寝泊りする場所でもある待機所からは出られない。
里に戻れるのは1週間に一度回ってくる休暇の時だけ。
食事も里からの業者が1日1回、3食分をまとめて持ってくる。
代わり映えのしない、冷たい弁当の繰り返し。
血気盛んな暗部達には、一番面倒がられてる任務である事は間違いなかった。
肉体的疲労があまりない分、余計に気持ちがうつうつして来る。
今回のメンバーはカカシ達以外に、17歳と20歳のチームである、ミトとカタシ、
カカシとほぼ同世代の21と22のコクブとシギ
そしてカカシより年上のハセ、ホンマツ、ムロウ、アカメだった。
カカシより年上のこの4人は、忍者としての実力は確かに誰しもが認めるほどであったが、
日頃から素行の悪さで、暗部内では有名だった。
カカシには、事前に三代目より話があった。
『あの4人の気性の荒さも、暗殺を任務とする時には、武器にもなり得る。
だが、国境警備では周りに悪影響を与える事もあるだろう。
かといって、あやつらだけ、特別扱いは出来ぬ。
皆が好んではいない国境警備は、順番に務めなくてはな。
今まで、頭ごなしに押さえつける隊長の下で反発する事も多かった。
お前のように、柔軟なタイプがいいのかも知れぬ。
歳はお前の方が下だから、何かとやりづらい点もあろうが、よろしく頼む。』
しかし、普通でも憂鬱になる国境警備の任務中に、荒くれ4人組とのチーム作りは中々上手くはいかなかった。
けして、任務違反で処分されるような大きな事は表立ってせず、
カカシの見ていない時を見計らって、皆の休憩所であるリビングを占領し、カカシ達以外の4人に
まるで子供じみた嫌がらせのような事を繰り返して、チームの雰囲気を悪くしていた。
特にかわいそうなのは最年少のミトとペアのカタシで、何かとうさ晴らしの対象にされていた。
今回の国境警備が始まって5日日には、カカシ達が見張り勤務から戻ると、
ミトとカタシが生傷や痣を作っており、驚いたカカシが問い詰めると、修行をしていたと言う。
ハセ、ホンマツ、ムロウ、アカメの4人とも口を揃えて、
若い2人の修行を見てやったという。
カカシはミトとカタシだけを呼び出した。
「修行って言っても、行き過ぎだよね。チーム替えを希望する事も出来るよ。」
と尋ねたが、二人は断った。
「俺たちが弱いのが悪いんです。せっかくカカシ隊長のチームに入れたんだから、こんな事くらい平気です。」
二人は、憧れのカカシのチームから外される事の方を危惧していた。
4人組の方は、火影から頼まれている事なので、チームから外せない。
カカシは自分を慕ってくれる後輩達を思い、
その行動は許されないが、気分的に鬱屈してるのだろう4人の気持ちも、
そして年下の自分が隊長という事も、気に入らないのであろうという事が理解出来、
どうしようもなさに、精神を疲弊させていた。