4日ぶりに木の葉の里に戻った。
しかし、テンゾウは4日も経ったとは思えなかった。
はじめて火影室でカカシに出会ってから、今日までがまるで一瞬のように感じる。
「お疲れ様だったねえ。報告書は急がなくていいから。」
カカシが笑顔で言う。
暗部の報告書は、メンバーが書いてリーダー格に渡し、OKなら、提出ということになっている。
「はい、お疲れ様でした。報告書書けたら持参します。」
「ウン。じゃお疲れ様。」
「先輩、どこ行くんですか?病院はあっちですよ。」
「いやー、大丈夫でしょ。家に帰って寝てりゃ治る。」
「なに言ってるんですか。傷は結構深かったですよ。化膿して跡でも残ったらどうします。」
「忍者の身体に傷がついててもお婿にはいけるでしょ。」
「いけません。」
「いけないの?傷があったらお婿にいけないの?知らなかったよう。」
「先輩、いい加減にして下さい。病院行きますよ。」
テンゾウはカカシのケガをしていない右腕を掴み、そのまま、木の葉病院へ向かう。
カカシはテンゾウに手を引っ張られながら、おとなしくついて来た。
「テンゾウは世話焼きタイプだね。」
「どっちかって言うと、世話は焼くより焼かれる方が好きです。先輩が言う事を聞かないから。」
言ってから、テンゾウは先輩に対して言い過ぎたかなと思い振り返る。
カカシは後輩の言動に怒る様子もなく、少し伏し目がちに歩いていた。
−まつげが長いー
テンゾウは思い、今、そんなことを考える自分がおかしかった。
カカシが木の葉病院の診察室に入ったのを見届けて、テンゾウは病院の出口の方へ向かい始めた。
その時、診察室のドアの向こうからガタガタッというような音と、『カカシ上忍!大丈夫ですか?』という看護人達の声が聞こえてきた。
テンゾウは診察室にとって返した。
カカシは診察室で倒れ、そのまま入院となった。
傷の手当ても含めて処置が済み、病室のベッドで横になってるカカシの前で、テンゾウは怒りを顕にする。
「先輩、倒れるほど辛かったならどうして言ってくれなかったんですか。僕はそんなに頼りになりませんか。」
「そうじゃないよ。診察室ではちょっと躓いただけだよ。」
テンゾウは怒り顔でカカシを睨む。
「本当は河原で休んでる時にはもう限界だったんでしょ。チャクラはほとんど残ってないって看護人達から聞きました。」
「え〜と、ほら、後輩の前で倒れたらかっこ悪いし、先輩として。」
そう言ってカカシがテンゾウの機嫌をとるように笑顔で言う。
ー曲者だこの笑顔ー
テンゾウはすでに気づいていた。カカシの笑顔は鎧だ。
笑顔で誤魔化し本当の自分を出さない。
辛くてもその素振りを見せない。
何を考えているのか、相手に読み取らせない。
テンゾウに説明できないモヤモヤとした気持ちが襲いかかる。
4日も二人きりで過ごし随分話もした。皆が憧れる天才忍者と近しくなれた様な気がしていた。
今もすぐ目の前のベッドにいる。
しかし、テンゾウは二人の距離は絶望的なほど離れているような気がした。