おそらくカカシ達の野営地を急襲した際の犠牲もあるからだろう、
敵の方はすぐには大きな動きを見せなかった。
本陣を探し出すため、野営をしながら、テンゾウの木分身だけでなく、カカシも影分身を繰り出す。
テンゾウは、日々、疲労の色が濃くなるカカシのチャクラ消費を心配した。
「先輩、無理しないで。」
「ほんとは8人での壊滅を狙ったけど、予定が狂った。
こうなったら、敵が体勢を立て直す前に、探してでも攻撃を仕掛けた方がいい。
金の為に、こういう戦闘に加わる抜け忍は幾らでもいる。
こっちは現在5人だ。早くしないと、こちらの分が悪くなる。」
カカシの言う事はもっともで、テンゾウも強くはカカシの影分身を反対できなかった。
雇われ抜け忍は、2流、3流がほとんどだったが、中にはビンゴブックに載ってる様な、S級犯罪者もいた。
カカシの影分身が反乱軍リーダーがいる本陣を見つけた時、
その隊ではそうしたS級犯罪者が、リーダーの周りにいた。
再びの総力戦。
5人での戦いは困難であり、カカシは写輪眼全開で臨んだ。
敵を壊滅に追い込んだ時には、カカシはほとんど1人で歩けない程になっていた。
ほぼ無傷なのはテンゾウだけで、ハセ、ムロウも軽症ながら怪我を負い、コクブもやや深手の傷を負っていた。
カカシはテンゾウに肩を支えられてようやく藤の国へ戻る。
コクブは藤の国内の病院でとりあえずの応急処置をしてもらい、
カカシたちは、怪我をした3人も療養している宿に戻った。
軽症のハセとムロウはシャワーで傷の汚れを流した後、忍者なら誰もが携帯している医療キッドで処置をする。
カカシもシャワーに入ったが、疲労激しく、何とか壁に手をついて立っているような状態で、
シャワー後はテンゾウに促され、横になった。
少しして、木の葉から、医療部隊が到着した。カカシはやっと安堵する。
応急処置は済ませているものの、怪我人の中でも重症のホンマツとシギは、
一刻も早く医療忍者の処置を受けさせたかった。
医療部隊は早速治療に取り掛かりながら、木の葉の大事件を皆に報告した。
「え!?うちは一族が全滅?」
病院から宿へ戻って来て、ちょうど話に加わったコクブが大声をあげる。
「ええ、こちらのメンバーはうちはの出身の方はおられないですよね。」
医療忍が聞く。
「このメンバーにはいない。元々暗部にはうちはイタチとあと数人しか・・・。」
「そのイタチが犯人です。始めは里も外部からの攻撃かと、一瞬騒然となったのですが、
うちはしかやられていませんし、何より1人残されたイタチの弟の証言からもイタチの単独行動と断定しました。
自分がしたと、弟にはっきり言ったそうです。」
「たった一人でしたのか?」
「何の為に同胞を・・・。」
「イタチはどうした?」
皆が口々に医療忍達に聞く。
「イタチは逃走中で、見つかっておりません。数日経ちましたし、もう里から相当離れたでしょう。」
それまで黙っていたカカシが起き出してきて、初めて聞いた。
「その、イタチの弟はどうしてる?」
「ああ、その子はショックが大きくて、先ほどの話もやっとの事で聞きだしたのです。今は病院にいます。」
「ショックで・・・、そうだろうな・・・。1人残されるなんて・・・。」
チャクラ切れで顔色の悪かったカカシが、更に蒼白になったようで、テンゾウはカカシの横に行った。
「先輩、辛いなら横になって。」
専門家である医療忍達もカカシを診て、チャクラ切れが激しいので、
急いで里に戻るより、安静にしたほうが良いだろうとの判断を下した。
「カカシ隊長は、怪我をされてるわけではありませんから、
ここの里長に頼んでしばらく療養されたら、自力で里まで戻る事がお出来になるでしょう。」
それは極妥当な判断だった。医療忍術を受けてある程度回復したとはいえ、
元々重症だったホンマツとシギは木の葉病院へなるべく早く搬送しなければならない。
チャクラ切れのカカシは急ぐ事が出来ないのだから、別々に帰還するのが当然だった。
里長は無事に依頼を果たしたカカシが、このまま残って療養する事を快く引き受けた。
宿の主人夫婦が挨拶に来る。
「療養されてる間の世話は私らに任せて下さい。里長から、重々頼まれてますから。」
怪我をして療養していた、ホンマツ、シギ、アカメの世話も引き受けてくれていた、人の良い夫婦だった。
一緒に残ってカカシに付き添うと言うテンゾウに、カカシは首を振った。
「この中で無傷なのはお前だけだ。医療忍達は戦闘要員でないし、
皆を里までしっかり送ってくれ。」
「ですが、ホンマツさんとシギさん以外は、医療忍術でもう回復してます。
先輩を1人残して帰れません。」
「大丈夫だよ。ここはもう戦場じゃないし、元々藤の国は忍の里でなく、
俺の事も知らないから、かえって危険な事はないよ。宿のご夫婦には世話かけるけど。」
なおも残るというテンゾウにカカシは強く首を振った。
うちは事件を聞いてから、更に元気がない様子のカカシの事を気に留めながらも、
テンゾウは仕方なくカカシを1人置いて、木の葉の里に向けて、皆と一緒に出立した。