「皆さん、御立ちになりましたね。ちょっとお掃除してもいいですか?ついでにシーツも変えましょう。」
宿の夫婦がカカシに話しかけた。
カカシは布団から出たが、ふらついて立ち上がれず、すぐ横の壁にもたれた。
ちょっと反省する。ここまで動けなくなるのは、はじめてかもしれない。
影分身を使って、更に写輪眼を使って、雷切も使った。ほんとに疲れた。
カカシの様子を見て、素早く掃除とシーツを替えた宿の奥さんが、カカシに言う。
「さあ、夕食まで、また休んどって下さい。」
カカシが素直に布団にもぐりこむと、奥さんがじーっと顔を見た。
「お兄さん、木の葉の里からって事は火の国の人?」
「はい。」
「やっぱ、大きい国の人は垢抜けとるやねえ。こないにきれいな男の人がおるんやもん。
映画俳優にでもなったらよろしいのに、もったいない。」
「おい、失礼なこと言うとらんと、夕飯作りにいくぞ。」
「あたしは褒めとるんよ。」
主人に引っ張られるように奥さんは出て行った。
カカシは人の良い夫婦に少し癒されたが、1人になると、
医療部隊から聞いた、うちは事件の事を思い出し、気が重くなった。
イタチの事はもちろん知っていた。合同で任務をしたこともある。
両親まで殺したのか・・・。何故そんなこと。
その子の顔は知らないが、1人残されたというイタチの弟が気にかかる。
どれ程、辛い思いをしているだろうか。
「ほんとに大丈夫か?」
「お前だって見てただろ。あれはほんとに動けない様子だった。」
「そうだな。」
「こんなチャンスはそうそうあるもんじゃないぜ。」
「宿の夫婦はどうする?」
「しばらく眠っててもらおう。」
『みんな殺された。』
『父さん!父さん!どうして?どうして?どうして置いて行くの?』
『みんな殺された』
『オビト・・・オビト・・・逝くな、逝くな、リン!先生・・・どうして1人にするの・・・?』
『みんな殺された』
泣いているのは誰・・・?
自分・・・?うちはの少年・・・?
いつの間にか眠って、夢を見ていた。
最近は見なかった、嫌な嫌な夢。
チャクラを使い果たし、悪夢を見て、そうして、気づいた時には近くまで来ていた。
いや、敵の気配なら、もっと早く気づけた。
カカシは起き上がったが、やはりふらつき立てずに、片膝をつき身構える。
障子を開け、カカシのいる部屋へ入ってきたのは、
皆と木の葉に向けて出立したはずの、ハセとムロウだった。