数日かけて、藤の国に着いた。依頼者である、藤の国里長及び、国軍幹部達と会う。
「木の葉の国より参りました。我らは秘密裏に行動します。面を外さぬ無作法をお許し下さい。」
カカシが挨拶する。
藤の国は小さく、貿易の国で忍の里ではない。反乱軍による内乱で混乱しており、
忍にも慣れていないらしく、里長、国軍幹部ともそわそわして、落ち着いた様子がない。
忍に慣れぬ様子の彼らに、カカシは自分ひとり面を外した。
「私が隊長のハタケカカシ。以下部下については、このままでお許し下さい。名は面の姿でお呼びください。」
里長及び軍幹部達は、カカシを見て初め驚き、次に露骨に困惑の色を浮かべた。
ヒソヒソとした声が聞こえる。
『17.8くらい?あのような若者が隊長・・・?』
『精鋭を送ると返事があったのに、まるで優男ではないか・・・。』
『木の葉は依頼金を取るだけとって、我が国を小国と思ってないがしろにしているのでは』
「ゴッホン。えー、その、随分お若い隊長さんですな。」
口を開いたのは里長だった。カカシは平然としている。6歳から中忍として、
正規部隊の任務にでていたカカシは、若さで驚かれることなんて、日常茶飯事だった。
17.8と見られた事は心外だったが、年齢を明かす必要もないので、黙っている。
「話を勧めましょう、軍幹部の方から、現在の状況について説明して頂けますか。」
カカシは、話を先へと促した。
軍幹部の話によると、反乱軍側はいくつかの山に分かれて、ゲリラ戦を展開しており、
時には民家に押し入って、金品強奪や娘をレイプしたりしているとの事であった。
「レイプなどしているのは、元々我らが同胞の反乱軍ではなく、雇い入れた各国抜け忍らしいが。」
「抜け忍を雇う資金は、どこから調達しているのでしょう。」
カカシの質問に、里長が答える。
「わが国は小国ですが、良質の石炭が取れる土地柄でして、国は豊かです。
その利権を狙う、隣国の橙の国か、藍の国から流れているのではと推測しています。」
「成る程、正面から戦争を仕掛けては大義名分もない。密かに内乱を煽動し、
その混乱平定を名目に国の乗っ取りを企てるという所ですか。」
「ええ、ですから、我々は利害関係がおきにくい、遠い木の葉に応援を依頼したのです。」
現在は国軍にて、里中心地への反乱軍の進入は阻止されているが、
防戦一方になっている為、 反乱軍本隊へ近づけないとの事であった。
カカシはその後も無駄なく必要な状況だけを聞きだし、意見を述べ、
その利発さと的確さに、里長や、軍幹部は目を見張った。
少しの間、里長が用意してくれた宿に泊まる。
「食事の用意もしておりますが、素顔は明かさずというのであれば、
お着きになるまでに人払いしておきましょう。布団も先に敷かせておきます。
後の片付けや、用意は昼間出て行かれてるとき、行うようにしましょう。」
情報収集が終わって、本格的に戦闘態勢に入れば野営の連続となる。
カカシは、宿の提供をありがたく受けた。
宿に着き、シャワーを浴び、用意されていた食事を食べ、ひとときの休息をとる。
布団は1部屋に4組ずつ敷いてあり、自然とハセ達4人と残りのメンバーに別れた。
藤の国への到着を目指し、ひたすら移動したここ数日、特にハセ達ともめるような事もなかった。
暗部としてそれなりの活躍をしてきたメンバーなのだから、
やはり、戦闘必須の任務には、総じて真面目に取り組むのだろうと、
カカシは少し安堵した。
ふと、昼の事を思い出して、隣の布団のテンゾウに聞いてみる。
「テンゾウ、俺今日、17.8だって言われたよ。そんな風に見える?」
「思い切り、見えますよ。」
「えー、そう?何か、いいのか悪いのか・・・。大体、俺の顔で木の葉の誠意を疑うのはどうなんだろ。」
「まあ、彼らも必死なんでしょう。自分たちの国を守るのに。」
「ああ・・・、そうかあ、そうだね。」
カカシは、テンゾウの側にいると包み込まれるような心地よさを感じる。
彼の心の大きさはどこから来るのだろう、もっと近づいて、側にいって知りたい。
知って、それからもっともっと近づいて、テンゾウの一番側にいるのが、自分だったらいいのに。
ふいに湧いた思いにカカシは気恥ずかしくなって、それ以上会話せず、布団をかぶった。