テンゾウに腕を掴まれて、部屋へ戻ったカカシは、倒れこむように、自分のベッドへ横になった。
疲れたように目を閉じている。
テンゾウは、部屋までは来ないと思いつつ、念のためドアに結界を張ってから、
自分のベッドに、カカシの方を向いて座った。
「すいません、先輩。」
カカシが目を閉じたまま聞いた。
「どうして、テンゾウが謝る?」
「もっと早く、あいつ等を締めとくべきでした。好き勝手言わせてしまって・・・。」
カカシが目を開けて、少しだけ笑った。
「あ、それ謝ってるんだ。術、使った事じゃなくて。」
「悪いなんて、思ってないです。手加減したのも腹立つくらい。
先輩が、責任問われるような事になるのは困りますけど。」
「俺の事はいいんだけどさ、テンゾウを余計な事に巻き込んでごめん。
それに・・・かばってくれてありがとう。」
普段、ほとんど感情の波を表に見せないカカシの、元気のない様子が気にかかる。
「先輩・・・。今は少し休みましょう。まだ、時間ありますし。」
テンゾウはそう言って、横になってるカカシに毛布をかけた。
「うん・・・。」
テンゾウが、部屋の電気を消し、自分のベッドへ戻った時、カカシが再び口を開いた。
「ねえ、テンゾウも聞いた事ある?俺とミナト先生・・・、4代目との噂。」
「・・・・・あります。」
テンゾウは、正直に答える。大体、暗部内での噂話なんて、ほとんどがカカシ絡みだった。
カカシの容姿の魅力や、その才能への賞賛と尊敬を込めたものが多かったが、
中には、それゆえに妬みを含めた下世話なものまで、様々であった。
テンゾウは聞く気が無くても、何人かが集まれば、結局誰かがカカシの話を始める。
現在一番近くにいるので、話があると呼び止められて、何事かと思えば、
カカシの噂話の真偽を聞かれたことも度々あった。
「俺、噂話なんて、興味ないから知らなかったけど、あんな事言われてるんだなあ。」
明りを消しているので、お互いの表情ははわからない。
それでも、テンゾウはカカシの方を向いて横になる。
「テンゾウは、その噂聞いた時どう思った?俺と4代目、噂通りだと思う?」
「それは・・・・・。分かりません。僕は、その時代、一緒に側にいたわけじゃないですから。ただ・・・。」
「ただ、何?」
「僕は部屋に行ったことあるけど、先輩、写真置いてるでしょう。」
「うん。」
「先輩にとって、大切な、良い思い出だから、飾ってるんですよね。
だったら、周りがとやかく言うことなんて、関係ないですよ。」
「大切だけど・・・・・、良い思い出かどうか分からない。」
「え?」
カカシの答にテンゾウは少し驚いた。