仮眠後、2人は真夜中の見張り任務についた。任務中は集中して余計な事は話さなかった。
しかし、朝の8時に交替の為現れたハセとムロウを見て、カカシは憂鬱になる。
「隊長、俺たちの任務が終わったら、話しようぜ。」
すれ違いざま、ハセに声をかけられた。
「わかった。」
カカシは、立ち止まりもせず、返事する。
シャワーを浴び、部屋へ戻ってカカシはため息をついた。
「はーどうしようかなあ。」
事態は、何も解決していなかった。いや、むしろ悪い方へいっている。
ハセ達を余計に苛立たせる事態になっていた。
「このままだと、また、ミトとカタシが八つ当たりされるなあ。」
「だからと言って、先輩が手淫するとか、冗談じゃないです。」
「うん、俺も最初は手くらいだったらいいかって思ったけど、やっぱり嫌だ。
気持ち悪い。時々、俺にそういう事言う奴いるんだよね。相手してくれみたいな・・・。」
テンゾウは、目の前の美しい人が、13歳からいる暗部という組織を考える。
「危険なことはなかったんですか?その、力ずくみたいな・・・。」
思わず、聞いてしまう。テンゾウの言わんとしてることが、カカシにも分った。
「そりゃないよ。俺、強いから。」
さらっと、カカシは返答した。
ふいに、カカシがテンゾウの顔を覗き込んで言った。
「俺の顔がいいっていう奴も時々いるけど、どこがいいのかなあ。俺だったら、
テンゾウの顔のほうがよっぽど好きだけどね。かっこよくて、男らしくて。」
テンゾウは一瞬固まった。あわてて、自分に言い聞かす。
−落ち着け、落ち着け、先輩は顔が好きって言ったんだ、顔、顔だけだ。それでも嬉しいけど・・・。
テンゾウは、あえて、カカシの言葉には返事せず、考えていた提案をした。
「先輩、こうなったら、物理的にハセ達とミト達が接触する機会を減らしましょう。」
「どうやって?」
「昨日、木遁術使った罰という事で、僕と、先輩の休暇を返上して、その分ハセ達に休暇を渡して、里に帰す。
休暇は4回残ってるから、ハセチームと、ムロウチームに2回ずつ分ける。
あいつらは、ここに居る事がイライラしてるんだから、話に乗ると思うんですけど。
後は、シフトを工夫したら、だいぶ接触する機会は減ると思います。」
カカシがちょっと心配そうな顔をした。
「俺はいいけど・・・。テンゾウいいの?休暇なくなって、怒る人とかいるんじゃないの?」
「彼女と別れたのは知ってるでしょう。」
「あの彼女じゃなくて、他に付き合ってる人が出来たんじゃないの?」
「今は、優秀な先輩とチーム組んで、難しい任務が割り当てられるし、
休みの日は、自分の事に無頓着な先輩の世話で忙しいから、新しい彼女を作る暇なんてないですよ。」
「そう、新しい彼女っていないんだ。」
カカシがちょっとはにかんだような笑顔になった。
その反応にテンゾウは戸惑う。カカシが嬉しそうに見えるのは自惚れだろうか。
夕方、話をして結局、休暇が増えるという実をとり、ハセ達は、昨日のテンゾウのしたことは不問にし、
ミト達への関わりも気をつけるという事で落ち着いた。
「根本的な解決にはなってないけど、ま、良かった。」
カカシが言う。
「テンゾウのおかげだ。ありがとう。」
機嫌をよくしたカカシはやたらと笑顔を見せる。
テンゾウは、その笑顔を見てちょっと、いやかなり、休暇返上を後悔した。
あと3週間、休暇もなくカカシと一緒に過ごすのだ。
カカシにはもう、辛い事は起こらず、いつも笑っていて欲しいと心から思う。
でも、その笑顔がテンゾウには毒だった。
機嫌の良いカカシの横で、テンゾウは3週間の忍耐生活を思い、深いため息をついた。