「テンゾウ・・・、もういいから・・・。」
印を組み始めたテンゾウを、カカシが止めた。
「何言ってるんですか?こんなめに合わされて。」
「でも、もういい。顔を見たくない・・・。側に居たくない・・・。追い出してくれたら、それでいい・・・。」
手を出すなとなと言われても、テンゾウの怒りは収まらない。
「頼む・・・、テンゾウ、もういいから、早く追い出して・・・。」
カカシは、元々チャクラ切れで寝込んでいたのだ。
その上、二人がかりで襲われ、テンゾウの腕に持たれかけている今も、
肩で息をするような状態だった。テンゾウは、ハセとムロウをとりあえず拘束して、
カカシが落ち着いてから、制裁を加える気でいた。
ムロウが慌てて、部屋から出ようとする。
「おい、ハセ、早く。」
ハセは床に座り込んだまま、慌てる様子もなく言った。
「バカだな。あわてて逃げたって、俺たちの帰るところはテンゾウと一緒じゃんか。」
「僕は許せないですよ。」
テンゾウがカカシに言う。
「頼む・・・。」
再度カカシに言われ、テンゾウは苦りきった顔になった。
それでもカカシに従い、ハセとムロウに言う。
「さっさと出て行け。二度と先輩に近づくな。」
言いながら、カカシを抱きかかえた。部屋の真ん中に敷いてある、
布団の上にカカシを運び、座らせる。
ムロウは言われるまま、すぐに出て行った。
ハセはカカシがテンゾウに抱きかかえられるのを見て、それからゆっくりと出て行く。
布団の上にカカシを座らせると、テンゾウは全裸のカカシを掛け布団で包んだ。
洗面所から、新しいタオルを2枚持ってきて、1枚でカカシの涙に濡れた顔を拭く。
もう1枚を小さく丸めてカカシの口に噛ませた。
「先輩、これ噛んで、我慢しててくださいね。関節整復しますから。」
「うん。」
カカシは素直にタオルを噛んだ。
テンゾウが、カカシの右肩と右腕を持ち、整復する。カカシは痛みに耐えた。
「どうですか?動かしてみて下さい。」
「うん、大丈夫。動かせる。」
カカシが右手を回しながら答えた。
「左は添木で固定しないといけませんが、先に服を着ましょうか。包帯巻いてしまうと、着にくいから。」
「うん・・・。ごめん・・テンゾウ、世話かけて・・・。」
カカシがうつむいた。
「先輩が謝ることじゃないでしょう。」
「うん、でも・・・。」
カカシが動かせるようになった右手で、自分をくるむ掛け布団を押さえた。
「テンゾウ・・・、また世話かけるけど、お湯汲んできて・・・。服着る前に、身体拭きたい。」
カカシの首筋にはハセが残したと思われる、赤い痕が残っていた。
テンゾウが着いた時、カカシの首筋に顔をうずめていた。
その光景を思い出し、再び血が逆流する思いに駆られる。
浴室からお湯を洗面器に汲みカカシの身体を拭く。元が白い肌なのに、
乳首周辺は全体に赤くなっており、カカシのされていたことの、想像がつく。
ハセとムロウへの激しい怒りと共に、カカシを1人にした自分への怒り、
そして卑怯なあいつ等をそのまま帰したカカシにも、怒りが湧いてくる。
どうして、こんな事をされて制裁を加えないのか、暗部の、木の葉の仲間だから?
バカバカしい。あと少し駆けつけるのが遅ければ、カカシは確実に犯されていた。
その時はどうしたのだろうか。カカシの肌に残る、蹂躙の痕が
テンゾウに混乱をもたらす。
ブチブチブチッ。
お湯を絞る手に力が入りすぎ、タオルが破けた。
カカシが困ったような顔をして、タオルを破いたテンゾウを見つめる。
「あ、ああすいません。」
慌てて、別のタオルを絞る。
「ありがと、後は自分で拭くから・・・。」
カカシが小さい声で言う。上半身は拭き終わっていた。
テンゾウは着替えの下着と、宿の浴衣をカカシの側におき、
「宿のご夫婦が眠らされていたので、起こしてきます。」
とカカシに声をかけ、部屋から出た。
「ふー・・・。」
廊下に出て、深呼吸をする。怒りの気配を消さなくては、
一番辛いのはカカシなのに、自分にまで気を使わせている。
テンゾウは、もう一度深呼吸をして、下へと降りていった。