首筋をハセの舌が這い、カカシは気持ち悪さで、背筋に悪寒が走った。
自分自身の事に、以前は執着がなかった。自ら死を望むことは、
生きられなかったかつての仲間に申し訳なく、それはしなかったが
どこか、自分の命を軽んじてたところがあったと思う。ましてや、体なんて、
以前の自分なら、どうでもいいと思ったかも知れない。
逆らう方が、身体への負担が酷くなることは判っている。
それでも今は、テンゾウの顔が浮かんで、絶対に嫌だと思う。
手首は折られているが肩は動かせる左手を、痛みをこらえて振り回し、
ハセからなおも逃げようと、身体をよじった。足もばたつかせ、起き上がる。
ハセが舌打ちした。
「逆らうなって言ったのに・・。ムロウ、足押さえろ。」
「ほいよ。」
ムロウに仰向けの状態に、足を押さえつけられた。
ハセは左手で髪の毛をわしづかみにし、右手でカカシの顎を持ち、顔を固定した。
「もう、いい加減諦めろよ。こっちは二人だし。」
そのまま、カカシの唇に覆いかぶさる。カカシは歯を食いしばった。
ハセがすぐに唇から離れる。
「おい、口開けろよ。」
そう言って、髪の毛はわしづかみにしたまま、顎から右手を離し、すでに熱を持って、
腫れている骨折させたカカシの左手首を強く押さえつけた。
「うう・・・っ。」
さすがにうめき声がでる。
「口、開けて舌出せよ。左手使えなくなるぜ。」
ハセがもう一度言う。それでも、硬く唇を閉ざし、ハセを睨みつけた。
「強情だな。」
ハセが、とりあえず唇は諦め、再びカカシの首筋に舌を這わす。
カカシが不快で顔を背けた時、その眼に、逆らう気力を与えてくれた人の姿が写った。
「テンゾウ・・・・・。」
テンゾウがカカシの部屋に移動した時、眼に飛び込んできたのは、
全裸のカカシに覆いかぶさり、髪をわしづかみにし、首筋に顔をうずめてるハセと、
足を押さえつけてるムロウの姿。カカシの眼からは涙がこぼれていた。
それまで、カカシを凌辱する事に夢中になっていた二人が、カカシの声で顔をあげる。
「テンゾウか・・・。失敗だな。」
ハセがつぶやく。ムロウはすぐに事態を飲み込めず、カカシの足を押さえたまま、テンゾウを見上げた。
瞬間、テンゾウはムロウの顎を蹴り上げ、床に転がすと同時に、カカシからすぐに離れたハセにも蹴りを入れる。
ハセは避けたが、テンゾウの足の方が早かった。横蹴りが首筋に入り、ハセも床に転がる。
「先輩!大丈夫ですか?」
そうして、すぐにカカシを抱き起こしたが、カカシが辛そうに顔をしかめた。
見ると明らかに右肩の位置がおかしい。
「関節・・・外された・・・。」
左手首も異様に腫れていた。テンゾウがそうっと手首を持ち聞く。
「これは・・・?」
「そこは・・・折られた・・・。」
「酷い事を・・・。」
テンゾウが床に転がった二人を睨み付けた。
テンゾウから立ち上る、憎悪を込めた本気の殺気にムロウが怖気づく。
ここ数日戦いを共にし、テンゾウの強さは判っている。
「お、おい、ハセ。い、行こうぜ。」
ムロウは蹴られて唇の端から血を流しながら、びくびくして、起き上がる。
ハセも蹴られた首筋を押さえながら、起き上がった。
「このまま、無傷で帰れると思うな。」
テンゾウが低くつぶやき、カカシを腕に持たれかけさせたまま、印を組んだ。