隊長であるカカシに言われて、テンゾウは仕方なく皆と一緒に
木の葉の里に向かっていたが、気はあせっていた。
なるべく早く木の葉に着いて、カカシを迎えに戻るつもりだった。
たとえ、カカシが元気になってこちらへ向かっていても、途中で会えるだろう。
藤の国に向かう時に、最短ルートを見つけたのはテンゾウだった。
カカシも、今テンゾウ達が歩いてる最短ルートを辿って帰ってくるだろうから、すれ違いになる事はない。
先頭を歩いていたが、怪我人もいるので、どうしても集団の歩みは遅くなる。
テンゾウは、気持ちが焦り、もう少し速くならないかと、しょっちゅう後ろを振り返っていた。
ふと、一番後ろにいたハセとムロウがいないことに気づいた。
確かに途中まではいた。胸騒ぎがする。
テンゾウは国境警備中、カカシに酷い事を言ったため、
自分が木遁術でその首を締め上げた時から、口もきかなかったアカメの側へ行った。
「ハセさんとムロウさんはどこ行ったんですか?」
国境警備以後、目すら合わせなかったテンゾウが、ふいに側に寄ってきて、
ビックリしたアカメだったが、ハセとムロウが居ない事は本当に知らなかった。
「あれ、いないな。どっかでタバコでも吸ってんじゃねえの。」
「タバコなら、歩きながらでも吸えるでしょう。」
「知らねえよ。お前が何であいつ等の事、気にするんだ。」
もちろん、気にしているのは、カカシの事だった。
テンゾウは医療忍のリーダーに、自分はやはりカカシがある程度回復するまで
側にいるという事を伝え、集団から離れた。
いつ、いなくなったのだろう。不安な気持ちで、全力疾走する。
テンゾウは、ハセが時々カカシを見ていることに気づいていた。
しかし、自分が常にカカシの側にいたし、今回の任務は過酷で、
さすがに戦闘中は皆、暗部として全力で戦っており、実際ハセ達4人が
カカシを困らせるような事を言ったり、規律を乱すような事はなった。
テンゾウは走りながら唇を噛む。油断した。カカシを1人残した事、
今回の任務の最大の失敗だ。
宿に着き、中へ入る。
土間で宿の主人が、奥の台所で奥さんが倒れていた。
テンゾウは、急いで近寄り、二人の容態を確認するが、穏やかな寝息をたてており、
明らかにただ眠らされているだけだと判る。
テンゾウは、自分の不安が的中し、全身の血が逆流するように感じた。
見知らぬ敵の仕業ではない。賊ならば、宿の夫婦は殺されているはずだ。
自分の迂闊さを呪いながら、テンゾウは瞬身の術で、カカシの部屋に行った。