「僕は、子供みたいに拗ねてたのかもしれないです・・・。
自分では自覚してなかったけど・・・。」
「いいけどね、ちょっとくらい拗ねても。
子供の時に子供らしく、拗ねる事が出来なかったんだから。」
カカシの言葉を聞き、テンゾウはカカシへの気持ちが一層高まる。
もうこの人ほんとに、どこまで好きになっても足らない・・・。
カカシは、テンゾウの心が柔らかくなったのを感じ、嬉しくなる。
自分の事も結局許してくれており安心する。そして眠くなってきた。
そうだ、俺澤山岳でも終わりの頃はほとんど眠らずテントの見張りしてたし、
戻ってきてからもテンゾウの家に行って、暗部待機所行ってハセと会って、
テンゾウに誤解されたと心配で、今まで全然寝てない。
ああ、テンゾウの胸温かい・・・。気持ちいい・・・。
「先輩、僕今日泊まっていいですか?」
「うん・・・。」
「今、うんって言いましたよね?」
「うん・・・。」
「ほんとに、いいんですか?先輩・・・、あれ、先輩、寝てるの?」
テンゾウの胸にもたれて、カカシはすでに寝息を立てていた。
「なんだよ、もう・・・。さっきまで、喋ってたのに・・・。」
テンゾウはため息をついた。
泊まっていいかって聞くのも勇気が要ったのに・・・。
仕方なく、抱えてソファからベッドに移す。
カカシの銀髪が寝乱れて、頬にかかる。
長いまつげ、白い肌、年上の男だというのに、
本当にきれいな人だとあらためて思う。
ベッドに移動したというのに、起きる気配無く寝息を立てている。
「警戒心ないなあ、襲いますよ。いや、起きてても襲うつもりだったけど。」
空しく一人突っ込みをして、テンゾウはカカシの頬にかかる髪をかき上げ、
その頬にキスをした。唇にしたかったが、自制できなくなりそうで、
頬で我慢する。カカシも眠ってしまったし、テンゾウも寝ようと思ったが、
少し考えて、やはりソファで横になった。間近で、カカシの寝顔を見れば、
これ以上の自制は無理だ。
テンゾウが目覚めると、すでに日は高く上っていた。
慌てて起き上がり、ベッドのほうを見るとカカシはまだ眠っている。
疲れているのだと思った。任務帰りで、色々あって自分も心配をかけた。
やっと、安心して眠っているのだ。
テンゾウは、カカシに何か作ってあげようと思い、冷蔵庫を見るが、
ほとんど空っぽだった。無理もない。
澤山岳の任務は何日かかるか予定がはっきりしないものだった。
きっと、出発前に生ものなどは処分して行ったのだろう。
テンゾウは買物に行く事にした。料理の材料以外にも、色々買いたいものもある。
カカシが目覚めた。うーんと大きく伸びをする。
ものすごくいい気分だった。なんだろう、最高にいい夢見たみたいな幸福感・・・。
天井を見つめながら、段々にはっきりしてくる。
ああ、そうだ。俺テンゾウと話してて・・・そっから記憶無い。
多分、あのまま寝ちゃったんだ。そうだ、テンゾウは?
部屋は一番弱にした状態の冷房が、微風を吐き出してるくらいで、静かだった。
起きてみると、テーブルに手紙がある。
『買物に行って来ます。朝と兼用になるけど、昼飯作りますね。』
カカシは、目覚めた時の幸福感が幻ではないと、更に気分よくなる。
任務明けで、しばらく休みだ。テンゾウだって、
昨日夜中に帰ったばかりで、すぐに呼び出しは無いだろう。
ハセとのキスの誤解は解けた。テンゾウの里に対しての複雑な思いも
少しは解きほぐされていくのを感じた。
気分がいい。
こういうのを爽快気分って言うんだろう。
どうせ顔を洗うんだし、シャワーでも浴びよう。
カカシは爽快気分のまま、シャワーを浴びる。
風呂から出てきて、髪をタオルで拭いていたら、テンゾウが帰ってきた。
「ただいま。先輩、起きてましたか。」
「うん。テンゾウ買物ありがとうな。」
「いえ・・・、シャワー浴びてたんですか?」
カカシを見て、テンゾウが聞く。
「うん。さっぱりした。」
「そうですか、シャワー浴びて待っててくれたんですね。」
「?うん・・・?」
テンゾウが、満面の笑みを浮かべた。
何だか、テンゾウの言い方が
気にはなったが、
「じゃ、早速作りますよ。」
テンゾウが台所に行ったので、カカシも手伝おうと台所に向かった。