「パスタ作りますね。ほうれん草と卵のしょうゆベースで。
ほうれん草とか、大丈夫ですか?」
「うん、おいしそう。」
テンゾウが料理をしている間にカカシは皿を出したり、飲み物用意したり、
二人だけの時間が穏やかに流れる。
テンゾウの作ったパスタはさっぱりしてておいしかった。
「まともな食事をしたのは久しぶり。任務中は兵糧丸とかでしのいでたから。」
「まともって、たいした料理じゃないですけど。
でも、良かった。先輩が気に入ってくれて。」
「ほんとにおいしかったよ。」
食後、二人で一緒に片づけをして、それぞれくつろぐ。
テンゾウがソファに座るカカシの横に座った。カカシはテンゾウの肩にもたれかかる。
「二人でゆっくりするの、藤の国以来だよな。」
「そうですね。」
チャクラを使い果たしたカカシが、ハセ達に襲われた後、
親切な宿の夫婦に世話になりながら、療養生活を送った数日。
骨折した腕が痛かったが、テンゾウが側に居てくれるだけで嬉しかった。
今もそうだ。テンゾウが側に居てくれる、それだけで心が満たされる。
あの国の帰り道の森で、好きだったって言われたんだ。
カカシは、森の中を思い出し、テンゾウの肩にもたれたまま、目を閉じた。
「こっち戻ってからは先輩は入院するし、互いにずれて単独任務が入って、
ほんとに二人きりって無かったですよね。」
「そうだな・・・。」
目を閉じたままカカシが答える。
ゆったりと自分の肩にもたれているカカシの様子を、テンゾウは見つめた。
「先輩・・・。気分どうですか?」
「気分?すごくいいよ。」
「体調は?ゆっくり眠って、食べて、少しは回復しましたか?」
「うん、大丈夫だけど?」
「そう、良かった。」
テンゾウが、カカシの顔を覗き込んで微笑む。
「僕、シャワー浴びてきますね。」
「えっ?なんで?」
カカシが、目を開けテンゾウに聞く。
「だって、さっぱりするじゃないですか。先輩も入ったでしょ。」
「そ、それは顔を洗うついでに・・・。テンゾウ。」
テンゾウはシャワールームへ入っていく。
シャワー浴びてさっぱりするのは判ってるよ、何で俺の体調聞くの、
何で昼間なのに今入るの、と言う前に
テンゾウは風呂のドアの向こうへ消えてしまった。
「え・・・?ええっ?」
部屋に一人取り残され、カカシは落ち着きを無くした。
さすがにテンゾウの行動の意味が想像つく。
「テンゾウ・・・。本気なの・・・。」
声に出してつぶやくも、テンゾウは風呂場の中。
なんとなく、ベッドから一番遠い、テーブルの端の椅子に移動して座る。
自分でも驚くほど、動揺している。両足を椅子の上に挙げ、
膝を抱えて、背を丸めて顔をうずめた。そうしていないと、
顔を隠していないと、何だかいたたまれない。
顔を上げなくても、全神経はテンゾウに集中していた。
シャワー終わったみたいだ、からだ拭いてるのかな、
冷蔵庫開けてなんか飲んだ・・・。あ、こっち来る・・・。
どうしよう、側で立ち止まった・・・。
「先輩、どうしたんですか。」
狭い椅子の上に膝抱えて座っているカカシに、テンゾウは尋ねた。
「べ、別に・・・。」
顔を上げることが出来ず、カカシはうつむいたまま答える。
自分が唐突に風呂に入ってしまい、戸惑っているのだろう。
長い手足を折り曲げて、顔を隠すカカシが愛しい。
テンゾウはカカシの髪に右手をやり、そっと撫でた。
左手でカカシの頬に触れ、顔を上向かせる。
まっすぐカカシの美しい色違いの目を見て、そして言った。
「先輩、あなたを抱きたい。」