程なく、カカシはギブスも外れ、写輪眼の検査も問題なく、退院できる事となった。
退院当日は紅とあんこが手伝いに来てくれた。
ガイに身体が鈍ってるだろうと、無理矢理に外へ連れ出されたりもしながら、
カカシはテンゾウがいない里での日々を過ごす。
いつの間にだろうか。自分でも驚くほど、テンゾウの存在が心を占めている。
少し前まで、特別に大切な人はいらないと思っていたのに。
今は、一人でいる時間が心もとない。
藤の国から帰還してすぐ、まだテンゾウが火影の護衛に出発する前に、お互い交換した合鍵。
カカシは、テンゾウの部屋の鍵を手に取り眺める。
この鍵の主は今はいない、そう思っただけで、ぎゅうと胸が痛くなった。
ただ、今回のテンゾウの任務は戦闘ではなく、
同盟国を訪問する火影の護衛なので、
よほどの事がない限り、予定どうり帰還するはず。
カカシはその日を待った。そしてとうとう、
テンゾウが里に戻ってくる予定の日の前日、
カカシのところへ式が来る。
テンゾウも、任務に真摯に取り組みながら、交代などで空いた時間は
ついついカカシの事を考えてしまっていた。
火影の護衛はもちろん一人ではない。護衛の暗部も交代で休息を取る。
仮眠を取りながら、早く会いたいとカカシの事を考える。
予定の訪問を終え、無事に火影が里に戻り、
テンゾウ達、今回の護衛班も解散となった。
テンゾウは、はやる気持ちを抑えて、まずは自分の部屋に戻る。
装具など置いてシャワーを浴び、自宅療養してるはずのカカシのところへ向かうつもりだった。
部屋に戻ると、テーブルに手紙が置いてある。カカシの字だ。
それには、澤山岳の南稜地帯で、多数の負傷者が出ているので、
派遣する医療忍の護衛と、戦闘の増援とを兼ねた任務に行くと書いてあった。
手紙の末尾には、早くテンゾウに会いたかったから、ちょっと残念、と書いてある。
里を愛し、任務に忠実なカカシが書いた、精一杯の自分に向けられた言葉を読み、
テンゾウは胸が熱くなる。それと同時に、身体中の力が抜けるような脱力感に襲われた。
本当に残念。任務だから仕方ないとはいえ、
手紙の日付けは、昨日になっており、後一日遅かったら、
自分も一緒に行けたのにと思う。休暇など、カカシと一緒でないなら、いらない。
このすれ違いが辛い。
澤山岳の南稜地帯、負傷者を出したのはどの分隊だろう。
おそらく左手も回復してるはずだし、体力のなさはあれど、
本来天才的に強い人だから、大丈夫という思いはある。
けれど一応情報収集しておこうと、テンゾウは帰宅の片付けもそこそこに、
暗部待機所へ向かった。